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森田邸

[ 2021 ]

CONCEPT

「小商い」の余白

京都市の北東部、比叡山の麓に建つ住宅で共同代表、森田の自邸である。



リビングダイニングに設けたL型開口は南西部にまたがる庭を望み、線の細いスチールの庇と地面から立ち上げて迫り出したコンクリートの基壇によって外からも中からも風景が切り取られ、この家のアイコニックな場所となっている。

そして、今新たな家に住まいながら、ゆっくりとパン小屋の計画を進めている。

SOLUTION

1
「小商い」の余白を設けること

 求められたのは、必要最低限の諸室のみでただ唯一、将来的に小さなパン屋が出来るようにして欲しいということであった。
店舗併用住宅でもなく、単なる家でもない。そこに住む人たちが少しずつ、ゆっくりでも始められる「小商いの場」を設けること、少しの余白を建てる前から計画しておくことに向き合いながら、計画を進めていった。
約80坪と比較的ゆったりとした敷地に対して、建物を一方に寄せることはせず、敷地のほぼ中央の位置に配した。家を取り囲むように出来た外部空間には、南側に駐車スペース、南西部にまたがるように庭を設け、その間をすり抜けていくようにアプローチを配置した。元ある木々たちは生き生きと植わり、道を行き交う人たちとの距離感を絶妙に調整してくれていたので、それらを活かし、新たに設けた樹木と掛け合わせることでこの家の顔として設えた。北側は境界から建物を3mほど離し、小さなパン小屋を建てる余白とした。いわゆるこの家の「小商いの場」である。

2
シンプルなプラン

建物は、非常にシンプルな構成としている。
家の中央に1階水廻り、2階寝室のコアを配置し、その周囲に玄関、LDK、将来パン屋厨房、和室としている。和室上部にのみバルコニーとしているが、その他の上部は全て吹抜けとし、切妻ボリュームの中に四角いコアが挿入されている形としている。1階コア部分の周囲はぐるりと回遊出来る計画とし、将来小商いを始めたときの使い方も想定している。
寝室には、北側のトップライトから取り入れた光を吹抜けに迫り出したカウンターでバウンドさせることで柔らかな間接光とし、部屋内部に取り入れている。

3
多支点梁工法の採用

屋根構造は、910mmピッチに交互に組んだ登り梁とそれらを上下から挟み込むように通ったそれぞれ2本ずつの母屋と支点桁で構成された「多支点梁工法」を採用することで、小屋レベルの水平梁をなくし、全体的な高さを抑え、プロポーションを整えるとともに内部中央のコアと切り離すことが可能となった。

  • プロジェクト:森田邸
    主要用途:住宅
    所在地:京都市左京区
    竣工年月:2021年2月
    カテゴリー:新築
    主要構造:木造
    規模:地上2階建

    敷地面積:254.75㎡
    建築面積:69.56㎡
    延床面積:97.04㎡
  • 構造:北添建築研究室 担当/北添 幸誠
    植栽:GREEN SPACE
    真鍮照明・ポスト・インターホンカバー製作:Ren
    家具セレクト:株式会社アルク
    施工:株式会社 翔工務店 担当/奥田 翔一
    写真:笹の倉舎/笹倉洋平

    掲載情報:architecturephoto.net

DATA